心から「ごめん」と思ってそれを言葉にするのは案外難しい
大人が子どもに無理やり言わせる「ごめん」に意味はあるのだろうか?と私はいつも思っています。
「ごめん」と自分から伝えようとすることが大切なのではないでしょうか?
私は何度も保育士が子どもに、
「ごめんねも言えないの?いつもあんなにお話してるでしょ!」
「ごめんって言うだけじゃん!もうお昼ごはんの時間になっちゃうよ!」
「ごめんって言えない子はもう遊べません!」
「じゃあ先生の真似して!『ごー』ほら、まずは『ごー』でしょ。言って」
みたいなことを言っている場面をたくさん目撃してきました。
ほとんどの保育士が「ごめん」をとにかく言わせようとします。
「ごめん」ができない子はかなり責められています。驚くことに1,2歳でもですよ?
保育士が「ごめん」という言葉を聞くまでは終わらせないと意地を張れば張るほど、残念ながら子どもは本当の意味での「ごめん」を言わなくなっている印象です。
本当に本当に残念です。
なぜ「ごめん」が言えないのか考えてみる
ごめんと言えない、言わない子どもはそれなりに絶対理由があります。
年齢によって理由は大きく変わるかと思いますが、考えられることを挙げてみるとこんなところでしょうか?
- 悪いことがわからない
- 悪いことをしたときに「ごめん」と言うことを知らない
- 悪いことをしたと思っていない
- 悪いことをしたけど、それには理由があるから「ごめん」と言いたくない
- 恥ずかしい、プライドが邪魔をする、負けた気持ちになる
改めて理由を考えてみると、大人から強要されることなく心から「ごめん」と思って言葉にするには色々な条件が揃わないと無理なんだなと気づきます。
心から「ごめん」と言えるまでに必要な大人の援助
自分から「ごめん」と言えるまで、子どもの成長や発達に応じて保育士としてどんな援助をすればいいのか私なりに考えたことは次の4つです。
叩いてしまった子をA君、叩かれてしまった子をB君とします。
①「悪いこと」が何なのか理解するための援助
1,2歳あたりの子どもはそもそも悪意があってやっているわけではないことも多いです。
なので、お友達が嫌がることは「悪いこと」なんだと伝えるところからスタートです。
まずは、保育士が「B君いたいね」「いやだったね」と寄り添いながら簡単な言葉でB君の辛い気持ちを代弁し、そんな光景をしっかりA君に見て、聞いて、感じてもらいます。
まだ相手の立場に立って考えることが難しい時期なので、完璧には理解できなくても「悪いこと」をしてしまった雰囲気を味わってもらうところから始まります。この雰囲気は「悪いこと」を理解している年齢でも私は大切にしています。
②悪いことをしたと思ったときに伝える言葉が「ごめん」だと理解するための援助
たくさんの経験をして「悪いこと」がなんとなくわかるのが2,3歳あたりでしょうか。
言える言葉も増えてくるころです。
「悪いことをしてしまったと思った時は『ごめん』って伝えるんだよ。」と教えていきます。
でもすぐに上手に言えなくて当たり前!
言えるようになるまでは、一緒に言ってあげたり、難しいときは代わりに伝えてあげたりするくらいで良いと思います。
いきなり「ごめんって言いなさい!」と怒るより、最初は寄り添ってあげたほうが後々素直に自分から言える子になると私は思います。
③「悪いこと」をした理由を吐き出して落ち着くための援助
だいたい理由があるんですよ。おもちゃとられた、嫌なこと言われた、先に叩かれた、順番抜かされた、一緒に遊んでくれないなどなど。
まずは「そうだったんだね。それは確かに嫌だね」と深く理由を認めてあげること!
当たり前だと思っていたけど案外やっている保育士は少ない印象です。
確かに僕も悪かったなとA君が思えない限り「ごめん」が自然に出てくることはありません。
それならA君の「B君も悪いんだ!」という気持ちを全部吐き出してもらって冷静になってもらうしかありません。A君の行為について話すのはそれからです。
④素直になれる環境を用意する援助
保育士があまりにも怒鳴りすぎてしまうと周りにいる子もA君を攻撃する目で見るんですよ。するとA君の敗北の空気が流れるのです。これじゃあ素直になれないよなって思ってしまいます。A君の気持ちも興奮したままです。
A君が冷静になったところで、
「どんな理由があっても叩いて人を傷つけるのは良くなかったよね。」
という内容を伝えたら、保育士はさっさと出番終了の空気を出してあげたらいいのかなと最近思っているところです。怒りも許しもしないフラットな立場に戻る感じです。
(そもそも私は大けがに発展しそうな喧嘩以外はあまり介入しないですけどね。)
2,3歳あたりまではここから②のような対応もしますが、
4,5歳あたりからは「さぁ、A君、B君と話してきなよ」と送りだします。
保育士も周りの子も関係なしの2人きりの状態を用意してあげるのです。
この話し合いで謝れるのかはA君に任せて、謝れなかったとしても口出しはせず、事の行方を見守ります。見守りながらそんな解決方法もあるんだなとむしろ私が勉強させてもらってます。見てると子どもの仲直り方法って独特で「ごめん」なんて必要ないことも意外とあります。
まとめ:悪いことをしてしまったとき×『ごめんなさい』=条件がそろえば自分から言えるから強要する必要はない!
自分が悪いことをされた立場になって考えるとですよ、先生が「ごめんって言うんでしょ!」と怒って、相手が嫌々「ごめんなさい」と言ったところで満足しますか?って話なんです。
私だったらすごく嫌です。本当に思ってるのかよ!ってむしろ余計に腹が立つかもしれないです(笑)
いきなり「ごめんなさい」と言えるようにならなくても大丈夫。
子どもがたくさんの経験をして、大人が適切な援助をすれば必ず自分から謝れるようになります。信じて待ってみましょう!